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ジブリ『風立ちぬ』とカプローニ社

ジブリ『風立ちぬ』とカプローニ社

ジブリで宮崎駿監督作品『風立ちぬ』では、あるイギリスの航空機製作者で設計者のカプローニ氏が登場します。

カプローニは実在した人物で、堀越二郎の夢のなかに現れ、『風立ちぬ』の企画書によれば、二郎にとって「挑発者であり、助言者であり、二郎の内面の代弁者」という重要な役割を果たします。

カプリーニは、1886年当時のオーストリア=ハンガリー帝国のマッソーネ(現在のイタリア、アルコ)に生まれた航空技術者で、1908年に航空機、自動車、オートバイのメーカー「カプローニ社(カプロニ社)」を創業します。

第一次世界大戦が始まると、アメリカやイギリス、フランスといった連合国側からの需要に応え、カプローニ社は爆撃機や輸送機を供給、躍進します。

このカプローニ社の作った飛行機に、「Ca・309」という軍用偵察機があり、その愛称が「GHIBLI(ギブリ)」です。

画像 : Ca.309 Ghibli

GHIBLIはサハラ砂漠に吹く熱風を意味し、カプローニ社の「GHIBLI」もその熱風に由来します。

そして、このカプローニ社の「GHIBLI」の読み方を、宮崎駿監督が「ジブリ」と思い込み、「スタジオジブリ」と名付けられました(ジブリの出しているフリーペーパーの名前も「熱風」です)。

このエピソードが物語るように、宮崎駿監督自身、カプローニ伯爵とカプローニの作る飛行機が大好きでした。

実際、『風立ちぬ』の報告記者会見のとき、宮崎駿監督は次のように語っています。

僕はすごくカプローニの飛行機が好きで。「スタジオジブリのジブリっていう名前は、ほんとはギブリだ」ってばらしてる人がいますけども(笑)、じつはギブリは、そのカプロニ社の飛行機なんです。

なんでもない小さな木製の双発機ですけど、サハラ砂漠の救難機をやっていたんですよね。サハラ砂漠で飛行機が落っこちた時に、それを捜し回る飛行機だったんです。

それがとても好きだったものですから、「ジブリ」という名前を付けたんです。

出典 :『ジブリの教科書18 風立ちぬ』

映画のなかで語られるカプローニの言葉は、宮崎監督の20世紀文明に対する考えが深く反映されていると言われています。