ジブリ『風立ちぬ』カストルプの声優とモデル
;”>宮崎駿『風立ちぬ』より
ジブリ作品で宮崎駿監督の『風立ちぬ』では、声優陣でとてもユニークな起用がありました。
その一つが主人公堀越二郎役を『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』で有名な庵野秀明監督が演じていること。
そして、もう一つ変わり種なのが、クレソンばかりを食べ、日本語で話す謎のドイツ人カストルプの声を演じているスティーブン・アルパート氏の起用です。

このカストルプというのは、ソビエト連邦のスパイであるリヒャルト・ゾルゲがモデルと言われ、ゾルゲと接触したことで堀越二郎も特高に追われることになります。
カストルプは恐らくスパイ。実在のスパイ、ゾルゲがモデルと思われる。国際情勢に詳しく、ドイツの煙草が切れたと言いつつ後日同じ煙草を吸っている事からも支給を受けている事がわかる。彼と接触した事で二郎は特高に追われる #風立ちぬ pic.twitter.com/4zWlfbaNxt
— TAKUMI™ (@takumitoxin) 2015年2月20日
以上のように設定としてはゾルゲがモデルとも言われています。
また、「カストルプ」という名前は、カストルプ自身の口からも発せられるトマス・マンの小説『魔の山』の主人公がモデルになっています。
『魔の山』のカストルプ青年は造船技師で、彼は結核で山の結核病院に入院します。この7年間の入院生活のあいだに出会った人々との経験を経て成長する物語です。
設定としてのゾルゲ、名前としての『魔の山』のカストルプ。
そして見た目や喋り方などのキャラクター造形のモデルとなっているのが、カストルプの声優も務めたスティーブン・アルパート氏です。
アルパート氏とは、一体誰なのでしょうか。
アルパート氏は、スタジオジブリの元取締役で、海外事業部の部長だった人物です。ジブリの海外展開に重要な役割を果たします。
宮崎駿監督の海外出張にも毎回同行し、10年以上に渡ってジブリの事業に深く携わってきましたが、2011年、家庭の事情によりジブリを退社。
別れの寂しさを感じながら何かプレゼントしたいとアルパート氏の似顔絵を描こうとした宮崎監督ですが、満足いく出来栄えの絵ができないまま残念ながらアルパート氏は帰国の日に。
もともとアルパート氏の日本語の喋り方に不思議な魅力も感じていた宮崎駿監督は、『風立ちぬ』制作に当たって、彼をモデルに造形したキャラクターというのがカストルプでした。
アルパート氏との一件がなかったら、この外国人の登場人物は存在しなかったかもしれない、と鈴木プロデューサーは言います。