ハチクロのツンデレでかっこいい森田さん
ハチクロの登場人物で、はぐちゃんともう一人の天才として登場する森田さん。
森田さんが、最初にはぐちゃんと出会ったとき、森田さんは、まるで小学生の男の子が好きな子に意地悪をするように、彼女が嫌がることをします。
たとえば、はぐちゃんを妖精のコロボックルに見立てて写真を撮影したり、むりやり粘土板で足型をとったり、キノコの椅子に座らせようとしたり(挙句、その写真をネットに掲載します)。
こうした意地悪にすっかり怯えたはぐちゃんは、森田さんを拒絶し、逃げ回るようになります。
あるとき、森田さんは、はぐちゃんの足型のペーパウェイトを持ってきて、ぶっきらぼうに「コレやる」と言います。
でも、はぐちゃんは森田さんにトラウマを抱いていたせいで、手当たり次第に持っていたものを投げつけ、拒否反応を示します。
そのはぐちゃんが、森田さんに投げつけた物の一つにあったのが、はぐちゃんの「はぐノート」です。
このノートには、服やサンダル、バッグなど、はぐちゃんが欲しくても値段が高くて買えないものが切り抜いて貼ってあります。
そして、森田さんが出稼ぎ(森田さんは、不定期で謎の出稼ぎに出向き、なぜかお金をたくさん持っています)に出てから、約10日後のこと。
森田さんは、仕事で疲れ切ってふらふらの状態でブランドショップに入り、足型に合うmiumiuのミュールを購入します。
みんなの前に姿を現すと、はぐちゃんに一言、「やる」と言ってミュールを手渡し、床に倒れこむように眠るのでした。
羽海野チカ『ハチミツとクローバー〈1〉』
大学時代にハチクロを読んだ僕は、森田さんへの憧れを持っていました。
自然体で、才能豊か。だからと言って表面に出る部分は決して重苦しくなく、愉快なのに、ときどき見せる、きりっとした真剣な表情がかっこいい。
こういう先輩が近くにいたら、竹本くんが焦るのも仕方がないだろうなと思います。きっと自分の足りない部分を突きつけられる気がするのでしょう。
しかも、竹本くんにとっては森田さんは恋のライバルでもあり、はぐちゃんと森田さんは、自分の知らない深い世界を共有しています。
普通には馴染めず、異端にも追いつけない、「普通の、普通じゃない人」というのが居場所がなく、一番辛かったりします。
それにしても、作者の羽海野チカさんは、『ハチクロ』で、竹本くんのような天才になれない青年の葛藤を描きながら、『3月のライオン』で天才の葛藤を描くのだから本当に凄いなと思います。