スタジオジブリ、高畑勲監督のエピソード
;”>ここでは、ジブリの高畑勲監督のエピソードを紹介します。;”>今回紹介するエピソードは、『平成狸合戦ぽんぽこ』製作時に起こった、高畑監督と作家井上ひさしさんとの「名対局」;”>です。
高畑勲監督と井上ひさしさんの「名対局」
;”>画像 : 『平成狸合戦ぽんぽこ』
1994年公開の『平成狸合戦ぽんぽこ』を製作するに当たって、こんなエピソードが残っています。
高畑勲監督とプロデューサーの鈴木敏夫さんが、「タヌキ」の物語をつくるというアイデアを膨らませる過程で行き詰まっているときに、ヒントをもらおうと話を伺ったのが、作家の井上ひさしさんでした。
井上さんは過去に『腹鼓記』という古今東西のタヌキを扱った話がふんだんに盛り込まれた小説を書いていて、その小説の存在を以前鈴木さんに教えたのが誰であろう高畑監督でした。
そこで、これまで一度も面識はなかったものの、ひとまず一度話を聞いてみましょうと鈴木さんは高畑勲監督に持ちかけ井上さんの片腕の男性に連絡します。
そういうことなら時間をとりましょう、と井上さんも快諾し、青山の喫茶店で会うことになりました。
鈴木さんと高畑さんは、井上ひさしさんと初対面だったのですが、会って早々、井上さんは具体的なストーリーの提案を次々と持ちかけてきました。
その数も驚きだったのですが、鈴木さんがもっと驚いたのは、その提案に対する高畑監督の反応でした。
井上さんが出してくれる提案を、高畑さんは次から次にダメ出ししていったのです。
面白い点は面白いと認めつつも、冷静に「なぜだめなのか」という理由を説明する。井上さんも、特に不機嫌になることもなく、それならこの案はどうか、と別の提案をする。
鈴木さんは、この「名対局」に感動したと言います。
高畑さんが「しかし、それはトトロを狸に置き換えただけじゃないですか」と言えば、井上さんは「そういえば、そうですね」と素直に受け入れて、次の案を話し始める。そのやりとりを隣で聞いていて、僕はハラハラしながらも、感銘を受けていました。
いくつも案を出してくる井上さんもすごいけど、それをすべて否定する高畑さんもすごい。普通はそこで怒るかへこたれるかしそうなものですけど、井上さんはそれを平気で受け止める。
その度量の大きさは計り知れないものがあります。
出典 : 『平成狸合戦ぽんぽこ ジブリの教科書』
結局、その「名対局」は4時間以上続いたそうです。
ちなみに、こうした縁もあったからか、井上ひさしさんは、スタジオジブリの次回作『耳をすませば(近藤喜文監督)』で作品の感想コメントを雑誌に寄稿しています(参照 : 井上ひさしとスタジオジブリ)。