『となりのトトロ』のタイトルの由来と「トトロ」の語源
スタジオジブリの代表作で、宮崎駿監督作品の『となりのトトロ』は昭和30年代前半が舞台のファンタジーアニメ映画です。
母親の療養のために父と一緒に農村に引っ越してきたサツキとメイの姉妹は、「トトロ」という森の不思議な生き物と出会います。
映画『となりのトトロ』は、そんな「トトロ」と子どもたちの交流を描いた物語です。
それでは、「トトロ」は一体なぜ「トトロ」という名前なのでしょうか。
作中では、メイが名前を尋ねると、トトロ自身が「トトロ」と言ったように聴こえたことからトトロと呼ばれるようになります。
また、北欧神話に登場する妖精であるトロル(トロール)が由来ではないか、という説もあり、『となりのトトロ』のなかでも、サツキがメイに、「トトロって、絵本に出ていたトロルのこと?」と尋ねるシーンもあります。
このトロルの出ていた絵本というのは、『三びきのやぎのがらんどろん』という本です。
『となりのトトロ』のエンディングロールで、サツキとメイが読んでもらっている絵本に注目
ただ、どうやら「トロル」がそのまま「トトロ」のモデルになったわけではないようです。
トトロの生まれたところ
映画『となりのトトロ』の舞台となったのは、埼玉県の所沢市です。
この所沢の魅力について、宮崎駿監督のインタビューや鈴木敏夫プロデューサーの解説、また宮崎監督の奥さんである宮崎朱美さんの四季折々の花や草木のスケッチと共に紹介した『トトロの生まれたところ』という本があります。
この本で、『となりのトトロ』のタイトルの由来やトトロの語源も語られています。
そもそも最初は、『所沢にいるとなりのおばけ』というタイトルだったとのこと。これが縮んで『となりのトトロ』になったと鈴木敏夫さんが書いてます。
宮さんという人は、元を正すと、東京のど真ん中で生まれ育ったいわゆる“街っ子”だ。それが結婚を機に、所沢に居を定める。いまから50年くらい前の話だ。そして、家の近くを散策するうちに思いついたのがあの『となりのトトロ』だった。それが証拠に、最初のタイトルは『所沢にいるとなりのおばけ』で、それが縮んで『となりのトトロ』になった。
なぜ縮んだのか、ということに関しては理由は書かれていませんが、「トトロ」の語源というのは、一説には宮崎駿監督の知人の娘が「所沢」を「とろろざわ」と言ったことに由来したという話もあります。
また、当初のアイディアでは、トトロは大中小が存在し、それぞれ「ミミンズク(おおとうさん)」「ズク(とうさん)」「ミン」という名前でした。
画像 :『となりのトトロ』のトトロの名前はトトロじゃなかった! ミミンズク、ズク、ミンとは…
大トトロのミミンズクの年齢も「1302才」という設定があります。
「となり」の意味は?
それでは、トトロに「となりの」という形容詞がつくのは一体なぜなのでしょうか。
『となりのトトロ』のイメージボード
てっきり、気づくと隣にいるから『となりのトトロ』だと思ったのですが、実際は違うようです。
隣に来たからではなく、住んだところの隣の山にいる、ということです(宮崎駿)。
宮崎監督が住み始めた頃には、すでに開発の始まっていた所沢。しかし、その隣には、まだまだ多くの自然が残されていました。
となりのトトロというのは、こうした住んでいる場所の隣の豊かな山に存在するおばけ、ということのようです。
また、この本に掲載された宮崎監督のインタビューを読むかぎり、「トトロ」のビジュアルも、「トロール」からイマジネーションを膨らませたわけではないようです。
宮崎駿監督が雑木林を歩いていると、ふと、「誰かがいるような感じ」がしたそうです。
そして、その森の気配は、いつの間にかちゃぶ台に座っているような親しみ深いものでもなく、愛想は振り向かないが悪意もない、もっと大きな存在としての「おばけ」。
そのとき、最初のきっかけとして「爪(つめ)」が見えたと宮崎駿監督は言います。「ごっつい爪」、その爪から、さらに想像を膨らませていき、宮崎監督の頭のなかでトトロは生まれ育っていったそうです。
以上、『となりのトトロ』のタイトルとトトロの由来でした。